被写界深度の計算

被写界深度に関わる用語と計算式などをまとめてみた。

項目

  1. 被写界深度
  2. 許容錯乱円
  3. エアリーディスク径
  4. 許容錯乱円の計算における画素サイズとエアリーディスク径の関係
  5. 画素ピッチ
  6. 被写界深度の計算(具体例)
  7. 被写界深度を深くするには
  8. 被写界深度の計算フォーム
  9. 参考資料

1. 被写界深度

被写界深度は、ザックリ言うとピントの合う範囲のこと。デジタルカメラ等で撮影する時によく使う用語(参考資料1)。

SfM-MVS(Structure from Motion and Multi-view Stereoの略)で使う画像は、対象にピントが合っていることが重要。だからSfM-MVS用の写真を撮影する時には被写界深度を念頭に置く必要がある。

特に、遺物の細かな痕跡を対象にSfM-MVSを利用して三次元計測したいなら、知っていても損はないはず。あるいは子どもの作ったLEGOの作品をカッコイイ三次元モデルにしたいなら必須。


Photo1. LEGO作品(製作:息子)のSfM-MVSは高難度

結論からいうと、被写界深度は、
  • カメラの撮像素子の大きさ
  • 撮影距離(カメラから被写体までの距離
  • レンズの焦点距離
  • 絞り
  • 許容錯乱円
の値(パラメータ)によって決まる。

たとえばカメラの絞り値(F値)が大きくなるほど深く(広く)なり、反対に絞り値が小さくなるほど浅く(狭く)なる(参考資料2)。

少し詳しく書くと、被写界深度は次の計算式で求めることができる(参考資料1,3)。

  • 被写界深度 =後方被写界深度 + 前方被写界深度で、
    $$ 被写界深度 =Tr+Tf$$
  • 後方被写界深度 $$Tr=\frac{\delta\times F\times L^2}{f^2- \delta\times F \times L}$$
  • 前方被写界深度 $$Tf=\frac{\delta\times F\times L^2}{f^2+ \delta\times F \times L}$$
Tr:後方被写界深度
Tf:前方被写界深度
f:焦点距離
F: 絞り(F値)
L: 被写体までの距離(撮影距離)
δ: 許容錯乱円

f:(焦点距離)は、使用するレンズの焦点距離といっていい。広角よりなら28mmとか35mmとか、標準が50mm、望遠よりなら105mmなど。

F:絞り(F値)は、そのままの意味。撮影時のF値(絞り)のこと。

L:被写体までの距離(撮影距離)は、カメラ本体にある「距離基準マーク」から被写体までの距離のこと(参考資料4)。レンズの先端から被写体までの距離ではない。

2. 許容錯乱円

許容錯乱円は、ピントが合っていると見做す最大の円(半径)のこと(参考資料1,3,5)。この円の大きさは、画素ピッチ(ピクセルピッチ、画素寸法あるは画素サイズともいう)とエアリーディスク径のどちらか大きい方なのだそう。

例えば画素ピッチのほうがエアリーディスク径が大きい場合、画素ピッチが0.03mmなら許容錯乱円も0.03になる。

3. エアリーディスク径

エアリーディスク径とは、エアリーパターンとよばれる同心円状の明暗パターンの中心(最輝部)から第1暗環までの長さのこと(参考資料5,6)。
そして、エアリーディスク径は光の波長(RGBそれぞれ)と絞り値によって変わるそうだ(参考資料5,6)。

4. 許容錯乱円の計算における画素サイズとエアリーディスク径の関係

なので、エアリーディスク径と許容錯乱円の値の大小は、絞り値によって逆転することもあるようで、厳密に許容錯乱円を求めようとするとかなりたいへん。実際には便宜的に画素ピッチを許容錯乱円としている事例も多いみたい。

5. 画素ピッチ

ところで画素ピッチってなに?
画素ピッチは、撮像素子(イメージセンサー)の画素と画素の距離のこと。

$$画素ピッチ^2 \times 総画素数 = 撮像素子の面積$$
なので、
$$画素ピッチ =\sqrt{\frac{撮像素子の面積}{画素数}}$$ となる。


ちなみに撮像素子の面積は、
$$撮像素子の横の長さ \times 撮像素子の縦の長さ$$
そして画素ピッチの単位は㎛(マイクロメートル)で、
$$1㎛ = 0.001mm$$
つまり、1㎛は1mmの1000分の1。
小さすぎてもはや実感できない世界。

6. 被写界深度の計算(具体例)

ではいよいよ具体的な事例を挙げて被写界深度を計算してみる。
なお今回は便宜的に、
  • 許容錯乱円=画素ピッチとする。
  • 絞り(F値)を8、被写体までの距離を315mmとする。
計算は以下の順におこなう。
  1. 画素ピッチを求める
  2. 許容錯乱円を求める
  3. 後方被写界深度(Tr)を求める
  4. 前方被写界深度(Tf)を求める
  5. 被写界深度を求める
A. Nikon 850 に105mmのmicroレンズを装着したばあい
  1. Nikon D850の画素ピッチを計算
撮像素子の大きさが35.9×23.9mm、総画素数が4689万画素なので
$$画素ピッチ=\sqrt{\frac{35.9 \times 10^3\times23.9\times 10^3}{4689\times 10^4}}\simeq 4.27765798759㎛$$
  1. 続いて許容錯乱円を求める。
    今回は、画素ピッチを許容錯乱円とするので、まあ次のようにする。
    $$許容錯乱円(δ) = 4.277㎛$$
  2. 後方被写界深度(Tr)は、
    $$Tr=\frac{0.004277\times 8\times 315^2}{105^2-0.00427\times8\times315} \simeq 0.3082mm$$

  3. 前方被写界深度(Tf)は、
    $$Tf=\frac{0.004277\times 8\times 315^2}{105^2+0.004277\times 8\times 315}\simeq0.3076mm$$

  4. おおよその被写界深度は、
    $$0.3082+0.3076=0.6158mm$$
というわけでNikon D850でmicroレンズ105mmを使って被写体までの撮影距離315mmで撮影したばあい、被写界深度は、たったの0.61mmくらいしかないことが分かる。かなり厳しい。
B. Olympus OM-D E-M1 MarkⅡ に30mmのmacroレンズを装着したばあい
  1. Olympus OM-D E-M1 MarkⅡの画素ピッチを計算
撮像素子の大きさが17.4×13.0mm、総画素数が2177万画素なので
$$画素ピッチ=\sqrt{\frac{17.4 \times 10^3\times13.0\times 10^3}{2177\times 10^4}}\simeq3.22342140703㎛$$

2. 続いて許容錯乱円を求める。
  今回は、画素ピッチを許容錯乱円とするので、前回と同じように。
$$許容錯乱円(δ)=3.223㎛$$
  1. 後方被写界深度(Tr)は、
    $$Tr=\frac{0.003223\times 8\times 315^2}{30^2-0.003223\times8\times315} \simeq 2.8685mm$$

  2. 前方被写界深度(Tf)は、
    $$Tf=\frac{0.003223\times 8\times 315^2}{30^2+0.003223\times 8\times 315}\simeq2.8172mm$$

  3. おおよその被写界深度は、
    $$2.8685+2.8172=5.6857mm$$
というわけでOlympus OM-D E-M1 MarkⅡでmacroレンズ30mmを使って被写体までの撮影距離315mmで撮影すると、被写界深度は5.68mmほどであることが分かる。

7. 被写界深度を深くするには?

カメラとレンズは変更せず、画像処理もおこなうことなく、1枚の写真の被写界深度を深くするにはどうしたら良いだろう?

被写界深度の計算式によれば、絞り(F値)をさらに絞るか、被写体までの距離をより長くするしかない。だが次の2点に留意する必要がある。
  • 絞りの限界(回析現象、いわゆる小絞りボケ)
  • 被写体までの距離を長くすると得るもの失うもの(撮影範囲の拡大と解像度)

絞りの限界

絞りの限界は、回析現象(参考資料7)を避けるためには考慮する必要がある。回析現象が生じる絞り値は、撮像素子のサイズと総画素数による。たとえばNikon D850の場合は12.8となっている(参考資料8)。

さらに詳しく書くと記事がかなり長くなるので別途メモするかも。小絞りボケをかなり気にするなら、F11くらいまでが絞りの限界かもしれない。

被写体までの距離を長くすると得るもの失うもの

被写体までの距離を長くすると、被写界深度は深くなるが、撮影範囲が広がる。いっぽう1ピクセル当たりの面積は大きくなり、解像度が低下する。

たとえばNikon D850で105mmのmicroレンズを使い、被写体までの距離が315mmなら、その撮影範囲は以下の通り(参考資料9)。
  • 水平 0.1077 m
  • 垂直 0.0717 m
  • 対角 0.129384 m
そして1ピクセル当たりの距離は、
Nikon 850の画素数は8256×5504ピクセルなので、
$$ 107.7mm\div 8256\simeq0.013mm$$ これくらいの数値だと、対象の形状を0.1mmのスケール感で捉えるには問題ないかもしれない。ただ、AとBの資料の0.1mmの違いが分かるように比較をしようとするとちょっと厳しいかも。 この時、絞りをF11で撮影するとその被写界深度は約0.84mm。ハッキリ言ってF8の時とほとんど変わらない。

となれば、被写体までの距離を長くするほかない。絞りをF11で被写界深度を3mmにするには、被写界までの距離は600mmまで延ばす必要がある。

その時の撮影範囲は
  • 水平 0.205143 m
  • 垂直 0.136571 m
  • 対角 0.246446 m
そして1ピクセル当たりの距離は、
Nikon 850の画素数は8256×5504ピクセルなので、
$$ 205.1mm\div 8256\simeq0.037mm$$ んー。
0.1mmのスケール感でそのカタチを記録しようとすると、このへんが限界かもしれない。

8. 被写界深度の計算フォーム

以上をふまえて、被写界深度の計算を簡単にできるようにフォームにしてみた。
計算に必要な6つの項目を入力すると、ピントが合うおおよその範囲を調べることができる。
厳密には異なるかもしれないけれど、使ってみたい方は目安程度にどうぞ。
そのほか、撮影レンズ関係の全体的な参考資料はこちら(参考資料10)。

とりあえずここまで。

9. 参考資料

1. 富士フイルム用語解説
2. 被写界深度が浅い・深いってどういうこと?
3. 焦点深度、被写体深度、絞りとの関係
4. デジタル一眼レフカメラの基礎知識 – レンズ
5. 許容錯乱円の計算
6. エアリーディスク径
7. 小絞りボケ
8. 小絞り限界計算機
9. カメラの撮影範囲の計算
10. 撮影レンズの基礎~レンズ選定編~

yamahiro

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